スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

Sign:003 夜鷹の砦 旧神の印 | main | あけましておめでとうございます。
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Sign:002 老人の話


 Dream.


 世界の終わりは、刻一刻と近付いていた。

 それは我々の目にも見えるように。


 大海に流れ出た、黒き死を運ぶ暗黒海流。

 小さいながらも断続的に続く局地的な地震。


 そして、既存の生物が突然変異を起こしたのか、

 はたまた、新たな系統樹から生物が誕生したのか、

 異形の生物達が世界各地に現れた。


 それらは眷属と呼ばれ、人々の数を物理的に減らしていく。


 これらは全て、ある場所を中心に恐るべき速度で広がっていった。


 太平洋到達不能極に近い、南緯四七度九分、西経一二六度四三分の海底。


 そこで人類の滅亡を嘲笑うように、

 あるいは、哀しむかの様に、

 邪神クトゥルフの墓所「ルルイエ神殿」は沈んでいた。



Sign:002 老人の話



 目覚めてから三日目の晩、零は肌寒い外に出ていた。
 凍てつくような寒さが体を刺すが、しかしその正体は見当たらない。
 恐らく、空を覆うこのドームに雪が積もり、内部を冷凍庫のようにしてしまっているのだろう。
 「死の雪」を防ぐための急ごしらえのドームらしいが、むしろ先に零下の気温で凍死しそうではあった。
「しかし、寒いな」
 はあっ…、と零は白い息を吐き出して身を震わせた。
「………酒場にでも行くか」
 といいつつも、零は酒は好まないのだが。
 あくまで、情報収集のためだ。



 やがて零が辿り着いたのは、場末感全開な酒場だった。
 とはいっても、この時代に寂れていない場所を探すほうが難しい。
 そんな時代を象徴するかのように、入り口には赤ら顔の老人が眠りこけている。
 腕には酒のボトルを大切そうに抱えながら。
「おい…じーさん、こんなとこで寝てたら死ぬぞ」
 放っておくわけにもいかず、零は英語で老人を揺り起こした。
「…ん?……なんじゃお前は」
 イギリス人だったのか、それともアメリカ人か、老人が酒焼けした英語で返す。
 その口から酒臭さに混じって腐臭を感じたが、零は時代柄気にせず答えた。
「何でもいいだろ、こんな寒いところで酒盛りか?」
 零が問うと、老人はフンとばかりに顔を背けた。
「酒場で噂話をしていたら追い出されたんじゃよ。人を狂人のように扱いおって…」
「…噂話?」
「ああ、海魔の類の噂じゃよ。わしはアメリカのマサチューセッツ州サセックス郡のインスマスという町から来たんじゃが……そこは半漁人と交配したものが多くおってな」
 ぴくり、と零は眉を動かした。
 インスマス。母の残したメモに記されていた町である。
 海に棲むものと交配し、大人になるにつれてその血が濃くなり、やがて海に回帰するもの達。
「『深きものども(ディープワンズ)』か……」
「……詳しいな、若いの」
 老人はよろよろと体を起こし、酒場の壁にもたれ掛かった。
「話が聞きたきゃ酒を持ってきてくれぃ……」
 そう言ったきり、老人は遠くを見つめたまま、何も喋らなかった。
 その瞳は黒く窪み、宇宙のように暗く翳が落ちている。
「………はぁ」
 仕方なく、零は酒を買うために酒場に入った。
 目覚めてからこの数日のうちにわかったことだが、銀行は凍結していなかったし、軍人だった頃は寮生活だった為に手を付けていなかった金があった。知らぬうちにソビエトでの生活で多少は消費されたようだが、まだまだ酒を買うくらいはなんともない。
 殆ど客の居ない店内を進み、零は財布から金を出し、棚にあるスコッチを示した。
「スコッチ、貰えるか、瓶ごと」
 身振りを交えると、マスターらしき男も合点がいったのか、金を受け取ってスコッチを寄越した。
「………ありがとう」
 零はスコッチを受取って、店を後にした。



「酒、買ってきたぞ。…じーさん」
「おっ、すまんな若いの」
 酒を見ると、老人の双眸に光が灯った。
 零が老人に酒瓶を投げると、老人はふらふらした様子でそれを受取る。
 そして栓を開け、一気にあおった。
「ふはっ、………そういや若いの、名前は何と言うんじゃ?」
 しゃがれた声で、老人が尋ねる。
 零は眉を顰めながら答えた。
「…白井零だ」
「アジア系だと思っていたが、ジャパニーズか」
 そうだ、と零が答える。
「わしはザドック・アレン、アメリカ人じゃが……まあそんなこたぁいい」
 そう言って、ザドック老人は裏通りの先の道を指差す。
「場所を変えようか、ここじゃ誰が聞き耳立ててるかわからんからの」
「別に構わないが…」




「ああ、この辺りならいい」
 そして零がザドック老人に連れてこられたのは、大きな湖の湖畔だった。
「ここは?」
 水面はたゆたう様に揺れている。ドーム内で風もないというのにだ。零下の気温だ、凍っていても不思議ではないのだが。
「エンダージュ湖……死の戯曲『黄衣の王』に出てくる『ハリ湖』のモチーフにもなった場所じゃ」
「……ここがイギリスで永久に演目中止になった『The King in Yellow』の舞台のモデルなのか?」
 零は湖を見渡した。
 温度とは違う、感覚的な何かが凍てつくような雰囲気を漂わせている。
「…わしはこの場所を選んだのはな、ここには『奴ら』が来ないからじゃ」
 やがて、ザドック老人が湖面を見ながら語り出した。
「奴ら?」
「ああ、半漁人じゃよ。…前にわしの住んでいた町にもおった……いや、いたからこそ逃げてきたんじゃが」
「『深きものども』がこの町にも居ると?…しかし海なんて」
「ドームのすぐ外には海があるんじゃよ、こっちは山側じゃがの。『暗黒海流』の所為で寂れたが、元々は港町だったらしい」
 初耳だった。零はこの町のことを殆ど知らない。
 まだ目を覚ましてから三日しか経っていないのだから。
「しかし若いの、海魔に詳しいのか?」
「…両親がそれの学者だった、父は物心付く前に、母は十四の時に死んだが資料が沢山残っていたからな。インスマス面の人々や『深きものども』、『ダゴン』については覚えがある」
「成る程な、道理で若そうな見掛けに反して目は死んでいるわけじゃ……いや、殺しそうな目というべきかの?」
「……まあ、何人殺したか覚えていない程度には死線を越えてきたつもりだからな」
「はっ、そりゃあ怖い。わしもインスマスじゃ何度も死にそうな目にあったもんじゃが」
 ザドック老人が顎の髭を撫でながら語る。
「しかしこの町も同じこった。いや、もっとやばいやつがおる」
 突如体を振るわせるザドック老人。
「この湖にゃ、半漁人どもはやってこない、奴らは『クトゥルフ』を信奉しとるからな。敵対しておる『ハスター』の伝承残るこの湖には近寄らんのじゃろう……しかし奴は違う。…知っておるか、若いの。闇に吠える『千の貌(かお)』の話を」
 『千の貌』と聞いて、零が思い浮かぶ存在はただ一つ。
 母の残した文献によると、『ニャルラトホテプ』またはナイアルラトホテップなどと人は呼ぶ。
 『千の貌』の名が示すとおり、あらゆる姿になることが出来るという者。
 時代の人間に化け、人類を破滅に向かわせようとする北欧神話でいうロキのようなトリックスター、土の属性を持つ『旧支配者(グレートオールドワン)』すなわち、『邪神』だ。
「ニャルラトホテプが、この町に?」
「数日前に死んだ友人の手紙によると、そのようじゃ……わしはもう諦めたがの」
 そう言ってザドック老人が最後の人煽りをしたとき、不意に酷い腐臭が零の鼻を突く。
「………わかった、じいさん…ありがとう」
 そこで零はいきなり話を打ち切り、その場から足早に立ち去った。
「(あの老人、目が死んでいる…。『死食鬼(グール)』か? 何故、俺に近付いた―――?)」
 振り返っても、引き留めることもせず、ザドック老人はニタニタ笑いながら零を見ていた。


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| 小説 | 00:54 | トラックバック:0コメント:0
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Author:レン
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