スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

Sign:014 そして彼は仮面を着ける | main | Sign:012 深きものども
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Sign:013 Fisherman's Blood



 市場は閑散としていた、それも当たり前だろう。漁港は閉鎖され訪れる者は『深きものども』くらいなのだから。零と真砂は大通りを歩きながら、適時『深きものども』を狩っていた。
「これほど楽な殲滅戦は始めてですね、相手の量には驚きですけど…」
「まだこれは漁港にいる奴等に過ぎない、居住区に潜伏している数に比べれば大したことは無いだろうな…」
「ここまで侵食されていたとは……」
 はあっ、と真砂が白い溜息を吐く。
「…余裕だな」
「ええ、まあ…どうしてですか?」
「囲まれているぞ、数は……四十ってところか?」
「え?」
 真砂も感覚を研ぎ澄ませてやっと気が付いた。生温い、気持ちのいいものではない殺気。
「こんな狭いところで!?」
「やはりヒト並みの知能は持っているようだな、人間ベースだから当たり前といえば当たり前だが…」
「な、なんでそんなにのん気に構えているんですか、完全に包囲される前に一角でも斬り込んで突破を!」
「もう包囲は終わった、来るぞ。自分の身は自分で守れよ…?」
 言って、零は天と地を逆さにしたかのように跳ね上がる。次の瞬間、零の立っていた筈の場所には『深きものども』が飛び込んでいた。零は空中で逆さになったまま、『深きものども』と目を合わせ、いつの間にか抜かれていた軍刀で首を刎ねた。
 『深きものども』の首から、何ともいえない生理的な不快感を与える臭気を放つ血が雨のように噴出す。
「世界に、血の饗宴を…」



Sign:013 Fisherman's Blood



「…くっ」
 血の雨を認識してから、やっと真砂は動き出した。しかしすでに『深きものども』は波のように押し寄せている。
 一方向にライフルを斉射し、弾の無くなったライフルをまるでいらないガラクタのように放棄してから、開いた間を縫って囲みを抜ける、ついでに腰から拳銃を二丁抜いて、すれ違い様に銃弾を撃ち込むことも忘れてない。
「ふむ、いい選択だな」
 言っておきながら、零はまだ中心で常に四対一を強いられていた。軍刀で首や胴を一閃し、いつの間にかマグナム弾を装填していたペルセフォネで風穴を空けていく。まるで、近接格闘をしているかのように、軍刀や拳銃を扱っていた。
 しかし、どこに潜んでいたのか後から後から『深きものども』は増えていき、真砂はいつの間にか再び包囲されていた。
「この数は、さすがに面倒だな」
 零は大回転で薙ぎ払い、周囲を一掃してから右目の瞼に触れる。
「(アリアドネ……使うぞ)」
 すぐに声は響いた。
「(ええ……無理、は…しないで……ね?)」
 瞬間、右目が熱を帯び、零の主観時間が緩やかに流れる。
 自己の時の加速化。時の死神、クァチル=ウタヌスと夢の中で触れた折に発現した力。
 零は瞬時に動いた、全ての『深きものども』の首を、最速で刎ねていく。まるで無抵抗になった人間みたいな生物の首を、出来るだけ速く、正確に、それだけを心がけて。



 真砂が二丁の拳銃の照準を前方の『深きものども』に合わせてから瞬きして再び目を開いたとき、一瞬遅れて全ての『深きものども』が膝をついた。そして、首がゴロリと落ち、血が激しく噴出してから前のめりに倒れる。
 真砂には何が起きたのか、更に遅れて理解した。ただ、その血の雨の中心に、彼は立っていた。
「(これが『宣告者』でも無い人間の力なの? 彼を止めるのには、中隊なんかじゃ足りない……大隊、いや一個師団でもどうか)」
「風利准尉、と言ったな」
 不意に声をかけられて、真砂はビクッと反応した。
「あっ、はいっ!」
「嫌な気配が海から近付いている、波止場の方へ合流しよう」
「え? ああ、わかりました」
 慌てて真砂は通信を入れる。
「こちらアルファ、現在位置を」
ザザッ[こちらブラヴォー、現在は漁協の十一番倉庫だ。何か一気に海から『深きものども』が上がってきたんだ! それも夜じゃないのに半魚人みたいなやつが! 護衛対象は無事だが、エイブン准尉が利き腕を負傷しちまった! オーバー!]
「了解、急行します……聞きましたか、少尉?」
「…ああ、予想通りなら結構まずいな。早く合流しよう」
「はい、了解です」
 二人は海へ向かっていく。



「…三番倉庫、ちっ」
 零は舌打ちした。周囲を固める殺気、十一番倉庫があるであろう方向から一塊に動いてこちらに接近してくる。
「どうしましたか?」
「『深きものども』のお出ましだ、迎え撃つぞ、弾はまだあるか?」
 真砂は残弾の無くなったライフルを捨てて、今は二丁の拳銃のみだった。
「このマガジンが最後ですが、ご心配なく。ナイフの方が得意なもので」
「…奴らの鱗に刃は立たん、退いた方が無難だな……ん?」
「どうしました?」
「いいぞ、船舶用の燃料缶がある。これで突破しようか」
 零は缶を転がして、接近してくる『深きものども』がそれを避けた瞬間、缶を撃ち抜いた。
「…行くぞ」
 爆音がして、『深きものども』が吹き飛ばされる。そして零は真砂の手を引き、駆け抜けた。
「海からのプレッシャーが増している……早く合流して退却したほうが懸命だなこれは…」
「あの、…何が?」
「いいから走れ、…あった、十一番倉庫、ここだな」
 零と真砂は倉庫に飛び込んだ。
「こちらアルファ、倉庫に到着しました。どうぞ」
ザザーッ[こちらブラヴォー、了解。今出て行く]
 やがて三人は二回のクレーン操作室から出てきた。
「零さんっ!」
 マガリが零に飛びつく。
「ん、無事か…」
「エイブン准尉は大丈夫ですか?」
 真砂の問いに、クルスが代わりに答えた。
「爪が掠っただけだ、一応包帯は巻いておいたんだが、まあ戦闘はこなせるよな?」
 コクリ、とエイブンはなんでもないかのように頷いた。
 そこにマガリを引っ付けたままの零が割り込む。
「意気込んでいるところ悪いが、退却するぞ。海から新手だ」
「新手?」
 クルスが聞き返した瞬間、エイブンも反応して、倉庫の正面の海を見る。
「この気配は恐らく、『ダゴン』……だな」
 その言葉に、軍人の三人は凍りつく。
 『ダゴン』、邪神クトゥルフを信奉する眷属にして、彼ら自身もまた邪神とされることもあり、『深きものども』に祭られる水棲の巨人である。ダゴンは雄の名称であり、雌はハイドラという。
 20mほどの体長で、数多の触手を持ちイルカのような哺乳類的な趣を持った半魚人の姿をしている。
 艦隊を全滅させるほどの攻撃性と、運動性を持つ、世界中の海軍が敗北した要因ともなりうるもの。
 それがたった四人の軍人と一人の民間人しか居ないここに迫ってきているのだ。
「一頭だし、陸に上がってきては十全の力を出せないとは思うが、それでも脅威には違いない。ここは退くべきだと思うが?」
 全員、異論は無い。まず、この戦力で勝てるわけがないのだ。しかし、真砂は手を上げた。
「…なんだ?」
「『ダゴン』が迫ってきているとして、目的はなんでしょうか。目的が満たされなければ、私たちどころかこのエンダージュ自体が危険に晒されるのでは?」
「ふむ……まあ一理あるが。目的は恐らく、そこの『宣告者』ではないのか?」
 零はエイブンを示した。
「彼らが邪神や眷属ならば、神の使いである『宣告者』を狙うと思うが…」
「では、退却したところでエイブン准尉を追ってくるのではないでしょうか」
「…まあ、そうだろうが。俺とマガリには何の関係も無いことだ」
「零さん……」
 今回の狩りにおける零の目的は最初に示されていた。マガリの安全を確保すること。このゲートの住民の生死やたかが軍人一人の生死など、知ったことではない。
「それに、エンダージュ湖に奴らは近付かないという確証を得るためにも、俺は釣ってみたい」
「エンダージュに住む人たちの命が失われたとしても?」
「無論だな、言うまでもない」
「あなたはそれでも軍人ですか?」
 きつく、真砂が問い詰める。クルスはそれを止めようとして、やめた。
「風利准尉…」
「軍人だが、正義の味方などではない。全ての人々を守りたいなんていう聖人でも博愛主義者でもないんだ、俺は。ただ、身寄りがなかったから生きるために軍人になるという選択をして、そして守りたいものが出来た、それだけのことだ。…責められる言われは無いな、俺は彼女との約束を果たす、そのために何が切り捨てられようと、知ったことではない」
 零は真砂を突き放した。
「……少し話し過ぎたな、『ダゴン』が来てしまった。俺が時間を稼ぐから、マガリを逃がしておいてくれよ」
 それだけ告げて、零は倉庫を出る。眼前には盛り上がる海面。
 真砂はきつく唇を噛んで、裏口へと急いだ。
 少し後ろをマガリが付いて行き、その後ろにエイブン、殿(しんがり)はクルスが務めた。
「大丈夫ですよ、風利さん。零さんはあんなことを言っていたけど、すごく優しい人ですから」
「でも……」
「自分の選択で多くの人が死んでいくのに、目を瞑れるような人じゃないんです」
 彼を信頼しきったマガリの笑顔を見て、真砂は溜息を吐いた。
「そう、あなたは羨ましいですね。あんな人に守ってもらえて」


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| 小説 | 22:56 | トラックバック:0コメント:0
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嫁:台場カノン

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