スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

解せるッ! 南無三! | main | Sign:014 そして彼は仮面を着ける
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Sign:015 彼女と過ごす一日



「真砂さんたちが来てから、明日で一週間ですね」
 零とマガリは森のログハウスに居た。マガリはキャンバスの前のウッドチェアーに腰掛け、零はベッドに横になって母の形見、『水神クタアト』に目を通していた。
 目を通していた、というよりは眺めていたというほうが正しいかもしれない。その魔導書は人が読むには明らかに適さない文章で綴られたものだからだ。
「…そうだな、しかし真砂たちのお陰で早急にゲート内の『深きものども(ディープワンズ)』を掃討出来た。元々いつかは軍に戻るつもりだったし、これは僥倖だったな」
「でも、私はもう少し零さんと一緒に居たかったですけど…」
「手紙は書く、電話もする。どうせ俺には身寄りも居ないし、長い休みの時はここに戻る機会もあるだろう……だから、そんな顔するな」
 零は起き上がって『水神クタアト』を閉じ、眉根を寄せるマガリに笑いかけた。
「マガリは笑っていたほうが可愛いと思うぞ?」
「えっ、あっ……」
「…ふっ、まあ今日は一日、マガリと過ごす予定だしな。何かあれば言ってくれ」
「んー、いきなりそう言われても…」
 と言いかけて、マガリは何かを思いついたのか、席を立った。
「どうした?」
「えっと、確か……この辺りに」
 小さなキャビネット棚の中を尻を振って捜すマガリ。零は静かに目を逸らした。
「…んと、……あった、ありました!」
 まるで戦利品のようにマガリはそれを掲げた。少し古めのポラロイドカメラだ。
「……カメラか? まあ、思い出作りということに関しては普通だな…」
「うー、反応薄いですねー。ふぃるむは入ってますし、すぐにでも戦えます!」
「戦えるって……写影機か何かかそれは」
「しゃえいき? って何ですか?」
「幽霊を除霊させる為のカメラらしい、実物は見たこと無いが……まあ、それで撮るんだろう?」
「あ、はい。たいまーもありますよ?」
 ちょうどいい台を見つけて、マガリはシャッタータイマーをセットし、カメラを置いて零の隣に肩が触れるように座る。
「…ベッドに若い男女、何かこれ絶対的にスキャンダラスだな……」
「え? 何か言いましたか?」
「…何でもない」
 タイマーランプが点滅する。
「はい、ちーずっ!」
「…ああ」



Sign:015 彼女と過ごす一日



 同じ構図のものをもう一枚撮って、二人はそれぞれ一枚ずつ持ち合うことにした。
 その後に始まったのはマガリからの質問タイム。零のことをもっと知りたいから、とのことだった。
「えっと、お年は?」
「…18だな」
 爛々と目を輝かせながら尋ねてくるマガリに対し、溜息を吐きながら零が答える。
「私は16ですから2歳差…まあどうとでもなりますよね」
「何がだ…?」
「何でもです、お誕生日は?」
「…2月1日」
「ではあと三ヶ月ですか……お祝い、したかったですね。私は10月の9日です、一緒に祝って頂きましたよね」
 思い出すようにマガリが言う。それは零が記憶を失っていた間の出来事だ。
「ああ、そうだったな…(知らんが)」
「血液型は?」
「…A型だ」
「っぽいですよねー」
「何だ喧嘩売ってるのか、喜んで買うぞ?」
「い、いえいえ。ちなみに私はO型です」
「っぽいな……」
「お互い様じゃないですか!」
 マガリが吠える。鬱陶しいので零は次いけ次、と促した。
「えーと、これが好きだって食べ物はありますか? よくパスタなんかは作ってますけど…」
「パスタは楽だから作っているだけだ。 まあ、アップルパイかな」
「似合いませんね…」
「ほっとけ……」
「あとは、うーん。 彼女さんとか奥さんは?」
「居らん、というかまだ18になって一年も経ってないのに結婚しているわけないだろう……日本は18からだからな、その頃はこっちに来た頃だし」
「あ、そうなんですか」
 答えを聞いておっし、とマガリには似合わず握りこぶしを作ってガッツポーズをするが、零は首を傾げた。
「でもこっちに来た頃ではないんじゃないですか? 私が零さんに会ったのは三ヶ月前くらいですし…、この団地に住み始めたのは私に会ったつい数日前って零さん前に言ってましたよね?」
 また、零には知り得ない情報が出てきた。では三ヶ月より更に前には、自分は何をしていたというのだろうか。
「…そうだったか。 まあ、彼女も居ない……中学を卒業してからはすぐに軍に入ったからな」
「ははぁ、それはまた灰色な青春ってやつですねー」
「そうだな。 だが別に女性に興味があるわけではないし、軍では言い寄られることも多くて不自由はしてな……おい、なんだその目は」
 途中からマガリの綺麗な蒼い目がすごく濁って死んでいるように見えたので、零は少し気圧された。
「えっと、その……もしかして、もうそういう経験とかはあるんですか…?」
「?……そういうとは、どういう?」
「えっと、その…あの……」
 頬を朱に染めて俯き、もじもじし始めるマガリ。零にはさっぱり意味がわからなかった。
 十秒ほど経っただろうか、ついにマガリが心を決めたのか、顔を上げた。
「だから、零さんはその…せ、せっくすをしたことがあるのかって聞いているんですっ!」
 マガリが立ち上がって咆哮する。
「うおっ、なんだ? 逆ギレ…?」
「で、そのどうなんですか!!」
「いや、軍でそんなことバレたら退役ものだぞ……俺は軍以外で生きるところがなかったし、品行方正にやっていたつもりだったからな。 休日に普通に買い物の荷物持ちをしてあげたりとかそんな感じだ」
「ほっ……」
 それを聞いて、マガリは安心したようで席に着いた。
「俺は仕事以外で女は抱かんからな…」
「……へ?」
「いや、俺は空軍に入る前は特殊部隊に居たからな、潜入した土地の情報を得て、風土に溶け込んだ服装や雰囲気を身に付けるためにも娼婦の利用は……あー、いや何でもない、16の少女にする話ではなかったな」
 つい軍人としての自分のやり方を話してしまった、と零は笑う。マガリもあははなどと笑って流したが、目だけは笑っていないように見えたのは多分零の気のせいだろう。
「ん、そろそろ日も落ちるな。質問タイムはこのくらいにしておこうか」
「そうですか、明日は何時に出るんですか?」
「朝の四時には、見送りは要らんぞ」
「……はい」
「そのかわり、今日はずっとお前を見守っていてやる。 安心して寝て良いぞ?」
「四時に出発なのに寝ないんですか?」
「まあな、不思議なもので、何年か特殊部隊に居ると寝るのは移動時ってのが体に染み付いているし……少しでもマガリの顔を覚えておきたいからな」
 照れ隠しに顔を逸らした零を見て、マガリは微笑んだ。
「そういうことなら、お願いしますね」





 そして、その後二人はなんでもないことを話したりして過ごし、マガリは遅めに布団に入った。
「…………はあ」
 零はベッドの隣に椅子を用意して腰を下ろし、軍刀に付着したここ数日の血の染みを拭っていた。
 マガリの安全を確保するために「深きものども(ディープワンズ)」を殺しつくした跡、無論この剣だけで行ってきたわけでも、零一人で行ったわけでもない。時には借り物の銃で、そしてハイランダーE77対物狙撃銃や、ペルセフォネを使ったこともあった。
 自らの知らぬうちに対人地雷にかかったものも居るだろうし、数日の間に餌付けに成功して飼いならした、マガリの騎士として残す猟犬「シラヌイ」に噛み殺されたものもいるだろう。
 彼らは元はといえばこの町の住人だった。そのことは忘れてはならないのだ。
「ん……」
 気が付くと、時計は三時を回ったところだった。マガリに教えたのはこのゲートから出る出発時刻、集合時刻はもう少し早い。
 そろそろ出ておくか、と零は軍刀を鞘に収め、腰に佩く。そして、自宅から持ってきたハイランダーのケースと着替えの入った鞄を持ち上げた。ふと、小さく寝息を立てるマガリの横顔が目に入る。
 なんとなく数十秒、眺めてから零は『水神クタアト』を鞄にしまった。
「……じゃあな、マガリ」
「…ん~、零さ、……ん」
 自分の名を呼ぶ彼女は、どのような夢を見ているのだろうか。零は彼女を起こさぬよう、静かにログハウスを後にする。
 外は日が出ていないこともあり、すごく寒かったが、そこに最後の見送りがあった。
「……シラヌイ、起こしてしまったか」
 数日前、街中で会った野犬のリーダー格だったドーベルマン。そのシラヌイが四本の足で確と大地を踏みしめて零を見詰めていた。
 人を起こさずに家を出ることは出来ても、動物の鋭敏な感覚には察知されてしまうらしい。シラヌイは常に放し飼いにしていた。でないと、『深きものども』に対応できないからだ。
 シラヌイは吠えたりもせず、ただ零の言葉を待っている。元々警察犬か何かだったのだろう、訓練された頭のいい犬だった。
「…マガリを頼む。俺が帰るまで、騎士の役目はお前に任せた」
 その言葉を聞くと、シラヌイは理解したのか首を縦に振り、ログハウスの入口に座り込んだ。
 零は荷物を担ぎなおして道を急ぐ。



「お別れはすみましたか?」
 集合場所には真砂が立っていた。二人は後ろのトラックに乗っているんだろう。
「……ああ、行こうか」
「では私と荷台になりますが」
「ああ、どうせ寝るからどこでも構わん」
 確認を終えて、真砂は先にトラックに乗り込んだ。
 零はまだ暗い町に視線を投げる。



「さらばエンダージュ、俺の目覚めた町…」



 その言葉は、深い闇と凍てつくような風に掻き消された。



 Prologue First End.


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| 小説 | 22:57 | トラックバック:0コメント:0
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Author:レン
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