スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

Sign018 風に乗りて歩むもの | main | Sign016 運命の出逢い
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Sign017 赤竜、地に堕ちて



 数日後、零は中隊を率いてウルタールに到着した。
「エドガー准尉、何人か適当に纏めて物見へ」
 とりあえず指令を飛ばしていく。エドガーと呼ばれた老練の兵士はすぐに取り掛かった。
「了解、リーアン伍長とその他五名、志願を」
「イエッサー!」
 ギリシャ調の街並みの中に、七名の兵が進む。
「次は歩哨だな……各隊、突撃要員のポイントマンが務めるように、場所は集まって相談しろ。 残りの者は設営を」
 と命令し、一度街へ視線を移してから、移動を開始しようとしたアンジェの首根っこを掴んだ。
「アンジェはこっちだ…」
「…はえ? なんでありましょう?」
「この辺りで一番高いところに案内を、故郷なのだろう?」
「あっ、はい。 了解でありますっ」



Sign:017 赤竜、地に堕ちて



「あの神殿が一番高いのでありますよっ」
 二人で白い煉瓦造りの坂道を進んでいく。マガリが示した先には白いギリシャ調の神殿があった。
「ふむ、パルテノン風だな」
 ウルタールは海に近いわけでもないのに、潮風の香りがどこからか舞い込む不思議な街だった。
「しかし、獣臭いな。 何だこれは……ん?」
 零が後ろを振り向くと、そこには驚愕の光景が広がっていた。少し高いところから見渡す街は神秘的でもあったのだが、本当に驚いたのは更に下、つまり煉瓦造りの道路の上。
「あれ? これはすごいですね~」
 振り向いたアンジェがのん気にしゃがみこむ。
 零の背後には、大量の猫が列を成して零を先頭に行進していたようだった。しかも現在進行形で色々な路地から合流し、後ろに並んでいく。
「何だこれは…?」
 先頭付近では数匹の猫がまだ進まないのか? とでもいいたそうな目で零を見上げていた。
「ウルタールは猫の街でありますから。古人曰く、ウルタールでは、何ぴとも猫を殺すこと一匹とて罷りならず、という法があるくらいでして」
「ほう……それは知らなかった」
「ですからウルタールには人より猫さんのが多いくらいです。 零さんは猫は嫌いですか?」
「いや、好きなんだが……基本的に片思いばかりでな、いつも逃げられてばかりなのだが…」
「ここの猫さんたちは少し不思議ですからね、人の心が読めるって昔から言われているんですよ」
「そうか、俺の猫への愛が通じたのかな?」
「で、ありましょう。 上の神殿にも猫の神様がいるのですよ、急ぎましょうか」
「ああ、そうだな……」
 零は猫たちから視線を外し、坂を上っていく。猫たちの行進は零の気のせいではなかったらしく、何も言わずにただ列を伸ばして零の後をついてくる。
 やがて、二人と猫たちは高台の神殿の前に辿り着いた。
「ここが高台か、なるほど……あの裂け目も見えるな」
 遠くには赤土の大地と、地割れが見える。ここの住人たちは近くにヴァーヘリオンと呼ばれる竜が住む前に退避したらしい。ここの住人も所謂普通と呼ばれる者ではなかったらしく、地割れが起きる数日前にはこの街を去ったそうだ。報告書に拠れば、地割れは昔の河の名残らしいとのことだったが。
 今度の任務は多数『宣告者』を排出するウルタールの安全の確保。あの赤土の大地の先にあるヴァーヘリオンの巣を破壊し、可能ならば全てを討伐すること。
 今、オペレーション『紅蓮の大河』が開始される。



「ん……?」
 裂け目の先をしばし眺めていた零が、ふと風の流れが変わったことに気が付いた。
「……あれ?」
 アンジェも声をあげて首を傾げる。
 不自然な風向の変化、これは狙撃手の二人にしかわからないほどの小さな変化だった。しかし、二人は統一連合軍に名を轟かせる狙撃手なのだ、小さな風が、着弾地点を数cmも動かすことがある。だから二人は風には過敏だった。
「少し生温さが混じったな……アンジェ、感じたか?」
「…はい、でも敵影は―――」
 アンジェは既にスコープ付きの狙撃用に調整されたアサルトライフルで空を覗き込んでいた。
「一時方向、さらに二度右だ」
 零は目を細めてそれを見る。青空の広がるウルタールの空に、夕日のような褪せた赤色の飛行物体が一つ。
 遠めに見ると、鳥のように見える。しかしそれは近付くごとに蝙蝠のように見え、翼竜のように見え、そして最後には竜の姿として捉えられた。
 不意にヘッドセットから無線が入る。
[隊長! こちらエドガー、上空にヴァーヘリオンを確認、単体ですがどうしましょう?]
 落ち着いた兵士の声、物見を任せたエドガーからだった。
「こちらでも確認した、物陰に身を伏せてやり過ごせ、こちらで対処する」
[了解、御武運を]
 通信が切れる。零は高台の手すりに上がると、ヴァーヘリオンまでの距離を確認した。
「零さん、あぶないですよっ!?」
 手すりのしたは民家の屋根、しかし高さは10数mはある。慌てた様子でアンジェは零を降ろそうとするが、零は声でそれを制した。
「アンジェ、ヘッドセットで指令を出す。 スコープから目を離すな」
「えっ、あっ? りょ、了解でありますっ!」
「いい返事だ……下の部隊に対空機銃の仕事は無いと伝えておいてくれ」
 零は微かに微笑むと、アンジェの方を向いたまま飛び降りた。
 空中で姿勢を制御し、崖のようになった眼前の壁を蹴って竜に向かう。
「白井零、推して参るか…」



 零は建物の屋根を蹴りながら駆ける。腰の軍刀を一瞥して、目標と自分の速度を正確に把握し、計算して、かち合う地点を算出する。
「アンジェ、あと27秒で撃て。尾を狙ってくれればいい」
 通信を入れる。面倒なので全チャンネル発信だ、ほかの兵たちも聞いているだろう。
 この初戦こそがこの後の戦いの士気を決める。零はそう考え、自ら出向いたのだ。
[……了解であります]
 やけに落ち着いたアンジェの声が耳に届く。もう、とうに狙撃モードに入っていたらしい。
 零は自らの計算に違わぬ速度で屋上を駆け抜ける。そして一際高い建物にまるで忍者のように張り付いて登りきると、居合いの姿勢で軍刀の柄を握った。
 元々この軍刀はなんら特別なものではない。尉官になった記念に知人から貰ったもので、斬れないことはないが、指揮刀ぐらいな使い道しかなく、非情に脆く壊れやすい。
 しかし、零は自らを縛る鎖として、この軍刀と共にあることを選んだのだ。戦鬼としての十全なポテンシャルを発揮できないように、味方に恐れられることのないように、刃の向きや力加減に細心の注意を払うことで、力任せの勝利をしてしまうことがないように。
 零が構えて数秒、銃声がウルタールの街へと響く。アンジェの狙撃はさすが、零が見込んだだけはある正確さだったようだ。
 尾によって姿勢を制御していたヴァーヘリオンは、操縦桿を失って堕ちる戦闘機のように、錐揉み回転して零の元へ。
「今この時、貴様の命を掌(たなごころ)に置いて、自らの生を実感する。……謝らんぞ、眷属」
 その時、一瞬が永遠のように引き伸ばされる。零とバーへリオンの視線が通う。
 竜の瞳に映った色は、想いはどんなものなのか、零にはわからない。知ろうともしない。
 知る必要は無いのだから。自分はただ生きるためにここに居て、刀を振るうのだから。
 その意味はわからなくていい。いつか後悔する日が来ようとも―――
「……散れ」
 一瞬にして永遠、竜はその瞬間に零の全てを理解した。そして、零は竜のことを何も理解し得なかった。
 殺す側が何も得ず、殺される側が全てを知る。それは、あまりにも特異な結果ではあった。
 そして竜を襲うは空間すらも引き裂くほどの居合い。刹那、否、虚空の間に放たれる斬撃は緋色の竜を慈悲も無く、祈る間も、恨む間さえも与えずに両断した。


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| 小説 | 23:12 | トラックバック:0コメント:0
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