スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

Sign019 ウルタールの猫 | main | Sign017 赤竜、地に堕ちて
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Sign018 風に乗りて歩むもの



 零は竜を倒した後に近くの兵と合流した。浴びた返り血をどうしたものかと溜息を吐いていると、後から来たアンジェがタオルを渡してくれた。
「……いい手際だったな、アンジェ。連れてきて正解だった」
「いえ…零さんこそ噂に違わぬお強さでありました」
 赤黒い血に塗れたタオルを掲げながら、零は軍刀を払う。
「アフターケアも万全と来たものだ。これならば……」
 と言いかけて零は口を噤み、軍刀を鞘に収めた。
「………いや、なんでもない。死体を片付けなければな、血の匂いを嗅ぎつけてどんな妖魔や眷属が来るかも知れん」
「はっ、でしたら零さんは先にお休みになってください。見回りなどの通達は追って私から…」
 健気に敬礼するアンジェを見て、零は先の考えに確信を得ていた。しかし、それは言わぬままに笑い流す。
「この程度、問題は無い。竜と一太刀結んだ位で休んでいたらいい笑いものだ。まだ体も暖まっていないしな、体力が余っているなら俺に付いて赤土の辺りまで出てみないか?」
 零の言葉に偽りはない。たった少し屋根の上をランニングして、刀を一度振るっただけのことしかしていないのだ。まだ休もうとしても休めるような消耗ではなかった。
「では、ご一緒しますが…」
「ならもう少し動きやすい武器を持ってくることだ、もうじきに夕暮れになる。何が出てくるかわからないからな」
「了解しました、では準備を済ませてきますね」
「ああ、手早くな」
 差し出される手に零はタオルを返してアンジェを見送った。そして周囲で生暖かい笑みを送ってくる兵士たちには「散れ」と一言命じ、特務班にヴァーヘリオンの死体の回収を要請してから自らも準備を始めた。



Sign:018 風に乗りて歩むもの



「準備出来ましたっ!」
 十分もかからずに再びアンジェが零の前に現れた時には、そもそもの装いが変わっていた。
 先ほどまでの軍服ではなく、統一連合軍の冬用の灰色をしたぶかぶかな男物の軍服に、下はレギンスだけといった格好だ。頭の上は常に金糸に似た髪を冠のように編んであったのだが、その部分をカチューシャのように大きなブローチで隠している。
 とりあえず上官であるところの零は詰問してみた。
「その格好は……?」
 すると、アンジェは悪びれるでもなく、似合っているでしょう?と言わんばかりの足取りで一回転して見せた。
「私の戦装束でありますっ」
 そう強く宣言されては、零も諌めようもなく。
「まあ、動きやすそうだし……いいか」
 としか言いようがなかった。なぜならば零も軍服を着用せずに、軍支給の白い長袖のワイシャツと私物のビンテージジーンズといった格好をしているからだ。
 零は基本的に、自分より上の立場の人間が居ない時の服装はこんなものである。刀の取り回しを重視した軽装に敵の目を引き、弾を集めるための白い上着なのだ。
「ただし、その格好は少人数の戦闘の場合にのみ許可する、あまりに大勢が自由な服装だと同士討ちも在り得るからな」
「もちろん、その辺りは考慮してのこの服装ですから、大丈夫でありますよ」
 制服でなければ軍紀が乱れるというような考えもあるが、零はその点は考慮していない。問題を起こすような輩は制服を着ていてもいつか何かやらかすものというのが零の考えだからだ。
「では出発するか、そろそろ日も傾いてきたしな」
「了解でありますっ」



 零たちは町の入り口で見張りをしていた若い兵士たちに挨拶をしてからウルタールを出た。外には多少の草原があり、その先にはすぐに赤土の荒野が広がっている。
「しかし、意外と丘が多いな……岩場も多いし、遮蔽物もある」
「小さい頃はよくここで遊んでいた記憶があります、パッと見では見つけられないような洞穴なんかもあったりするんですよ?」
「以外と面倒な場所だな……、それにしても……何も出てこないな」
「気配もありませんしねー。やはりヴァーヘリオンしか居ないんでしょうか?」
「かもな……竜なんかに天敵が存在するとも思えないし…」
 零が呟いた瞬間、二人は何かの気配を一瞬だけ感じた。
「零さん…」
「ああ、生温い殺気だ」
 零は身を低くして岩場に腰掛け、銃の安全装置を外した。
 その刹那、一気に風が巻き起こる。
「これは……?」
 正面にある丘に深く穿たれた窪み、そこから風が吹き出している。
「あの洞穴からみたいですね……いきますか?」
 と言いながらアンジェはどこからか水筒のような筒を取り出した。
「………いく?」
 零は久しぶりにそれを見た。大日本帝国陸軍製の小型対戦車砲「九一式迫撃砲」である。
 アンジェはそれを構えて洞穴に向けると、
「おい………アンジェ?」
 躊躇なく引き金を引いた。
 筒の後方から煙が噴出し、砲弾が射出される。砲弾は誘導されない使い捨てのものなので、そのまま洞穴に打ち込まれ、小高い丘ごと洞穴を吹き飛ばした。
 ドーン!と爆撃音が木霊する。煙が辺りに立ち込め、すぐに周囲には静寂が戻った。
「ふう……」
 いい仕事したー。といったような笑顔でアンジェが額の汗を拭う。
「いや、ふう……じゃなくて。今、完全に真正面から切り込む空気だったよな?」
 こんなバイオレンスな少女だっただろうか、と零はアンジェの個人書類を記憶から呼び覚ましてみるが、大人しくて真面目な医療班向き、しかし能力はエース級という文面しか出てこなかった。
「まさか、零さんを0.1%でも危機に晒すようなことがあってはいけませんから。回避できる危機は事前に回避しませんとね」
 アンジェは使い終わった迫撃砲をポイと転がすと、ライフルのスコープを覗いて洞穴のあった場所を見た。
「いや、そんなことは頼んで無…」
「先ほどは制止する暇もなく、竜に向かわれてしまいましたが。今度は先手を打てて良かったであります、一軍の将たるものが無闇に敵に姿を晒すのは上策とは言えませんから」
「……ああ、そうかもな」
 有無を言わさぬアンジェの言葉に、零は気を削がれた。
「しかし、地下に向かう洞穴だったらしいですね。丘を崩してだいぶ埋まりましたが、まだ穴が見て取れます」
「なるほど、まだ風は出ているか?」
「ええ、しかし困ったのであります。軽装で飛び出してきたために迫撃砲は一発しか持ってこれませんでしたから」
「…………」
 まだ撃つつもりだったのか、と零は戦慄した。十分足らずの準備で完璧に着替えを終えて、薄化粧をし、更に迫撃砲の用意とはどれだけ手際が良いのだろうか。
「では一応向かってみるか、その…爆撃地に」
「了解でありますっ。退却時に背後を取られたら困りますので」
 何故か、街を出てからは出会った頃のちょっとおどおどとしたアンジェの面影は消え去っていた。今あるのは確かな目標を見据えた冷静なアンジェだけだ。
 では、と零が岩場から腰を上げた瞬間、二度目の爆音が轟いた。そして迫撃砲を打ち込んだ場所が吹き飛ぶ。逆巻く風が、周囲に砂塵を舞い上がらせた。
「えっ?」
「な……ッ」
 零は絶句した。竜の天敵になり得るであろう、巨大なものが突き立ったのだ。
 大地に亀裂を生じさせ、現れたのは身の丈6mはあろうかという赤茶色の巨人。
 逆巻く風は赤茶色にしていた土を払い落とし、翡翠色の岩のような外殻を身に纏った細身の生物をそこに現す。
 零は母のレポートから、その巨人のことを記憶していた。
 ハスターと同じ風の属性を持つ邪神であり眷族。通称は「風に乗りて歩むもの」。
「イタクァだと? 何故…こんなところに?」
「…イタクァ?」
 アンジェが首を傾げる。
 イタクァ、またはイタカ。風に乗りて歩むものと言う名に違わず、遥か上空に生きる邪神だ。
「……ちっ、アンジェ。ここからは俺の命令に従え」
 零は赤の右目でアンジェを睨み、軍刀とペルセフォネを抜く。
「…は、はいっ」
「高台から俺を援護しろ。決して無理はしないようにな」
「りょ、了解でありますっ!」
 零は右手がじわじわと熱くなっていくのを感じた。
 懐かしいこの感覚。ニャルラトホテプとあった時以来の感覚だった。
「(アリアドネ……いけるな?)」
「(…いつもと…同じ……無茶は…しないこと…)」
「(了解だ。……ペルセフォネ、アンジェの手前だから姿は変えずにマグナム弾を)」
「(…わかっているわ)」
 約一年ぶりの邪神との戦闘が始まる。
 しかも今度は夢の中ではなく、現実で。


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| 小説 | 23:14 | トラックバック:0コメント:0
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