スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

Sign:022 不知火 | main | はい、おひさしです。
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Sign:021 知り得ない筈の懐かしさ


 行動を決めてからの零の動きは早い。まるで疾風迅雷。退却への迷いや恥など微塵も無い。
 自分は戦うときに戦い、逃げるときには逃げる。そういう人生なのだ、と考えている。
 掲げたのは常在戦場の四文字。戦場では退却など日常だから。
「アンジェ、敵影は確認できるか?」
 街の入り口まで戻ってきて、二人は逃げ切れたかを確認した。
 アンジェは背後を、そして零は上空を。しかし、背後に敵影は無く。空には曇りすらない夜空が戻っていた。
「クリアであります」
「了解。…これから曇天には気を付けたほうがいいな、いつ現れるかわからん」
「私が皆に伝えておきますね」
「そうしてくれるか、俺は少し武器と車両の確認に行って来る」
「いってらっしゃいませっ!」
 アンジェは元気に敬礼して見せた。この部下は零から見て、子犬みたいで愛らしいところがある。
 やはり……と零は考えて、やめた。何故かこの少女からは違和感を感じたからだ。
 繋がっているかのような、違和感を。今日の夕日
「……今夜は二人で見張りだ、二時まで寝溜めしておくといい」
「はいっ!」
 寝ずの番など、喜べる仕事ではないのだが。アンジェは至極嬉しそうに、返事をするのだった。



Sign021 知り得ない筈の懐かしさ



 アンジェに寝溜めすることを勧めた零だったが、零はふと思い付いたことがあって結局、夜まで起きていた。
「ん、こんなものでいいか」
 零は廃屋から調達してきた煉瓦で街の外れに竈(かまど)を作った。ちょっとした思い付きにしてはかなりのクオリティだが、これが初めてではない。
 暇さえあれば作っているのだ。勿論、竈は目的のものを作る手段であって、目的そのものではないのだが、戦場には廃材は腐るほどあれど、オーブンレンジなど無いからである。
 零は竈に火をくべ、数分待ってから予め用意していた生地を入れた。
 それは母に教えてもらった料理の中で、一番のお気に入り。母も祖母から受け継いだという、一子相伝のアップルパイだった。
 よく熟成させた生地に、控えめな砂糖と、多めのバター、ちょっとばかりのシナモン。そして紅玉という品種の林檎。勿論、戦場に居るからには揃わない材料も多い。しかし、零はその度に材料を変え、バランスを変え、変化を与え続けていた。元より、レシピなどはあらず口伝のみのものだし、母も祖母に教えられてから更に改良したと言っていたので、そういうものなのだろう。
 小一時間ほどして、零はアップルパイを完成させた。
「うん、良い出来だな」
 これなら見張りの夜食としても申し分ないだろうと、零は満足して銀の盆に乗せ、蓋を被せた。
 そして何を思ったか、火を落とした竈にTNTを貼り付ける。
「何かに使えるかもしれないし、煉瓦地雷の完成Death☆」
 語尾にらしくなさを全開で出し、完全に思いつきでやっちまった感溢れる作品が出来上がったが、かなりの殺傷性能を持つのが彼の想像の恐ろしいところである。
 とりあえず、罠とすると馬鹿な部下が掛かりそうなので、信管だけをセットして、起爆装置は付近の穴に煉瓦の屋根と草で隠した。予備の信管を入れておくのも忘れない。
 こんなところが伏線や生命線になるはずが無いのに、とにかく無駄な用意をして、使う場面を想像するのは零の数少ない趣味の一つである。無駄に集め、武器商人に預けっぱなしの武器コレクションも、その趣味のためにあるといってもいい。とはいっても、その預けた品々はペルセフォネの出現によってまるで無意味になってしまったのだが。
「よし、趣味を二つほど消化して息抜きもしたし、そろそろ見張りの用意でもするか…」
 零はペルセフォネにキスして、空へと放る。それだけで、銀色に鈍く輝く回転式拳銃は、あの夜と全く変わらないハイランダーE77対物狙撃銃へと変化した。
 担いでいくにしても、少々重過ぎるのだが。軍刀という重りを失った今、再びこの銃の感触を思い出すためにも、零は両腕にしかと抱えた。



「アンジ……」
 街の入り口の臨時拠点でアンジェは待っていた。相変わらずのあの服装で、狙撃銃を壁に立てかけ、自分も寄りかかって。まるで、恋人との約束のようにそわそわしながら、ずっと。
「…アンジェ、待たせたな。準備は終えたか?」
「あ、零さんっ」
 用意万端です、と言わんばかりにアンジェは狙撃銃を掲げる。
「……寝てないのか?」
 その様子が寝起きとは思えなかったので、零は尋ねた。
「いえ、寝ましたよ?」
 私が零さんの言うことを聞かないわけがないじゃないですか。と言わんばかりの顔である。
「…何時間だ?」
「十分あまりでありましょうか、ですが」
「寝溜めしろ、と言っておいた筈だがな……睡眠を摂らないと肌に悪いぞ」
 零はアンジェの頭を小突いて、行こう。と促した。



 二人は赤土の小高い丘に、見張り台を構えた。月が綺麗で、空気も澄んでいる。いい夜だった。
「今夜は暗視ゴーグルがいらないほどに明るいですね」
「ああ、しかし……不気味でもある」
 ダゴンは月の旧支配者である。潮風の匂いからは、エンダージュでの戦いを思い出す。
 黄衣の化身だった自分と、海から上がってきたダゴン。
 今思えば、あれはダゴンそのものというわけではなく、母や父が文献などから推測したダゴンであり、本来のダゴンはもっと巨大で強力な旧支配者なのだろう。右目が過敏に反応していなかったことからもそう考えられる。
 ふと、マガリは元気だろうか…? と、そんな考えが脳裏を過ぎる。今でもよく文通はしているが、やはり会ってみないとわからないこともある。別れてから一年ほど経った、しかし、まだあの地に戻ったことはなかった。
 あそこは、自分の知らない自分がいた町だから、怖いというのも正直ある。しかし、本当に怖いのは、文通相手のマガリが本当のマガリじゃなかったとしたら、ということだ。
 あの時、ニャルラトホテプが化けていたマガリの事を零は忘れられない。
 強烈な違和感を持っていた、あのマガリを―――
「零さん?」
 名を呼ばれて、零は不意に我に返った。
 気が付くと、アンジェが顔を覗き込んでいた。桜色の瞳が零の双眸を射抜く。
「…あ、ああ。すまない、寝ていないもので少しぼーっとしていた」
 何でもない、と心配顔のアンジェに言って零は思考を打ち切った。
「駄目ですよ、零さん。睡眠はちゃんととらないと」
 お前には言われたくない、と言いたかったが、その心配顔が不意にもマガリと重なった。
「ああ……そうだな、悪かった」
「少し寝ますか? 何かあったら起こしますから」
「そういうわけにもいかんだろう。何、眠気覚ましに紅茶を用意しておいた」
 零は小さめ魔法瓶を二つ取り出して、一方をマガリに差し出した。
「あ、ありがとうございます。…すいません、こういうところは私が気を配らなきゃいけなかったのに」
 特製のミルクティー。これの淹れ方も母に習ったものだ。
「気にするな、気まぐれに用意してみただけに過ぎない。…夜食もあるぞ」
 零は弾倉入れからナプキンに包んだアップルパイを一欠けら、アンジェに手渡した。
「アップルパイ……」
 アンジェは包みを開く前に、その中身をぼそっと呟いた。
 まるで、それを知っているかのように。
 匂いで察したのだろうか? と零は思ったが、アンジェは狙撃銃を傍らに置いて、丁寧に包みを開いた。
「凄く、懐かしい感じ。どうしてだろう? 私、アップルパイなんて今まで一度も食べたことが無いはずなんですけど、これの味は知ってる気がします」
 すんすん、と可愛く鼻を鳴らしてから、アンジェはアップルパイに噛り付いた。
「うん、おいしいです。すごく…」
「ん、そうか。それは作った甲斐があったというものだな……どうした?」
 気が付くと、アンジェは涙を流していた。
「すごく、おいしくて……懐かしいです。それに、嬉しくて」
「……何がだ?」
「何でありましょう、わからないですけど。…夢が叶った、みたいな」
「…………?」
 その言葉に、零は首を傾げるしかなかった。
 アンジェはそのまま数十分、感動し続けていたが、幸運なことにその日、敵の襲撃はなかった。


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| 小説 | 05:07 | トラックバック:0コメント:0
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