スノウイーターまるきゅー、もしくは雪食うバカです。           エロゲ東方FPS、仄かに漂う厨二臭

SnowEater⑨

Sign:023 未知なる夢 | main | Sign:021 知り得ない筈の懐かしさ
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Sign:022 不知火


 この辺りで一つ、少し前に時間を戻させてもらおう。
 まだ、最初のプロローグで語り尽くしていない話もあったからだ。
 それは、エンダージュで起きた、もう一つの出逢いの話。皆には一応簡単には紹介していたあいつだ。
 最も、今していた話も、二つ目のプロローグには過ぎないけどな。――――白井零



Sign022 不知火



 エンダージュに居た頃、零には悩んでいることがあった。
 率直に言えばそれは、マガリをどうやって一人で残し、生き抜き続けさせるか、ということだ。
 しかしその答えは出ない。
 護衛を付けようにも、そいつ自体が『深きものども(ディープワンズ)』になってしまう可能性があるし、今の時代柄、信用の置ける人物など多くない。異国の地であれば尚更だ。
 もう滞在日数も左程残っていないし、どうしたものだろうか。と考えていた時だった。
 何かの呻き声がする。低い、獣のようなそんな感じの。
 現在は真夜中のログハウス。マガリはベッドですやすやと寝息を立てている。
 エンダージュ湖の近くに深きものどもは近寄れないとザドック老人は言っていた筈だが。零は一応見回りに行こうと思い立ち、ペルセフォネをお供にログハウスを後にした。



 湖の外周部の森から少し出たところで声の主は見つかった。やはり深きものどもだ。
 零は木の陰から気配を殺して見ていた。
 深きものどもはしきりに後ろを振り向き、怯えたように、この先に踏み込んでもいいものだろうか、とかなり焦りながら迷っているようだった。
 どうしたのだろうか、と零は思う。そして、すぐに理解した。
「あの深きものども……左腕が千切れたようになっている、何かに追われていたのか?」
 一瞬風利たちだろうか、と思ったがそれも違うだろう。
 何故ならば遠めに見ても確認できるほどに、深きものどもの腕は無理矢理千切り取られたのか、筋肉の破片が糸のように飛び出し、骨まで露出していた。
 風利たちにやられたならばその傷は普通銃創であろうし、最低でもナイフなどの切断跡だろう。あんなふうになるとは考え難い。
「それはさておき、とりあえず………殺すか」
 零がペルセフォネを構えて木陰から出ようとしたとき、瞬時に黒い影が深きものどもの周囲を取り巻いた。
「……ん?」
 それは、零があまり得意ではないものだった。
 対ゲリラの戦場でもたまに見る、哺乳類の四足獣、つまるところ、犬だ。
 多種多様の犬が、深きものどもを取り囲んでいる。
 猫派の零には、お目にかかりたくもないし、間違ってもあんなところの中に自分がいるとしたらなんて想像したくもない状態だった。
「あー、ご愁傷様。…ほんとにな」
 零は額を押さえて同情した。
 しかし、同情してばかりではいられない。
 あの犬たちは人を食うのだろう。ならば自分やアンジェも危ないということだ。
 下手な人間よりもよっぽど賢く、強い犬の群れをどうにかしなくてはいけない。
 それもここはログハウスの近くなのだ、再びの接近を許さないためにも、殺すか、足に重傷を与えておきたい。
「ん………?」
 零が思考に耽っている間に、どうやら深きものどもはやられてしまったようだ。
 思考の時間すらも殆ど与えてくれないとは、とことん人類にとって有益な存在ではないらしい。
 そんなことを考えながら、零はペルセフォネを強く握る。
「ワウッ!」
 死肉を漁っていた犬たちが零の殺気を感じてか、先頭のドーベルマンの声を合図に一斉に散開した。
「いい動きだな、しかし遅い……」
 零の銃口は深き夜の中においても正確に、犬の軸足を捉える。
 そして、包囲を完成させる前の犬の足を撃ち抜いていった。
「ギャンッ!」
 犬が倒れ、断末魔の叫びを小さく上げる、それが開戦の合図となった。
 犬たちは隊列を組み、風下から、草影から迫ってくる。
 零は迫った犬の鼻先に回し蹴りをかまして、一瞬で両足を広げ、地に手を着けて身を屈める。
 その真上には、両サイドから飛び掛ってきた犬がかち合い、吹き飛ぶ。
「ふん…っ!」
 零はその二頭の顎を蹴り上げ、回し蹴りのダウンから回復しようとしていた犬の右足を撃ち抜いた。
「ギャウッ!?」
 残りは18頭、零は殺気で完全に相手の位置と動きを掴んでいた。
 自ら飛ばす殺気によるアクティブな反応と相手から受ける殺気によるパッシブな反応は零が長年の死地で得た能力だ。この力がある限り、零は敵性存在からは遅れを取らない。
「夜闇も奇襲も匂い隠しも、俺には効かないんだけどな……」
 まあ、自分の危険性をそこまで早くに感知されたのは初めてだが、と零は笑う。野生の勘、というやつなのだろうか。それとも、零に染み付いた血の匂いがそうさせるのだろうか。
「しかしな……」
 いつの間にか犬たちは、木の太い幹に姿を隠していた。右足を撃ち抜かれた犬も、顎を蹴られて気絶していた犬も、消えている。
「人はもっと鈍い、しかし獣はもっと直線的だ。……お前だな? こいつらに知恵を与えたのは」
 零は背後に気配を感じた。それは殺気ではなく気配。敵対する意思はないようだった。
 それは先頭に居たドーベルマンだった。耳の折れていないことから察するに、番犬か……或いは警察犬として飼われていたのだろう。その目は、炎の消えたように冷たく澄んでいた。
 零の瞳と同じように。
「死線を何度も掻い潜ってきたって目だな…」
 零の呟きに、犬は頭を垂れた。
 それは忠誠を誓う騎士のように高潔で、獣には見えない恭しい態度だった。
「なるほど、これは良い縁を得た。マガリの護衛には相応しいな…」
 零はその犬の頭を撫でる。犬は苦手だが、自分に忠義を誓うとあれば可愛く見えるものだ。
 犬の双眸に、零は自らの分身を感じていた。
「その火の消えたような目、不知火(シラヌイ)と名付けよう」


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| 小説 | 05:07 | トラックバック:0コメント:0
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